気候変動の影響と適応策

水稲(生育不良等)に関する気候変動の影響と適応策

影響

既に現れている気候変動による影響

  • 白未熟粒の発生、虫害の多発、粒の充実不足、胴割粒の発生、登熟不良、生育不良

地域:九州

特記事項:自治体へのアンケート結果

将来懸念される気候変動による影響

収量

  • 複数の気候モデル・気候シナリオで予測したところ、21世紀半ば(2031-2050年)では微減から微増

品質

  • 複数の気候モデル・気候シナリオで予測したところ、21世紀半ば(2031-2050年)において、品質低下リスクの低い区分の収量が大幅に減少するケースあり

病害虫

  • ニカメイガ、ヒメトビウンカの世代数は、いずれも増加

地域:九州

特記事項:<収量>

気象データはメッシュ全体の平均を用いているため、山間部ではメッシュ標高が実際の水田の標高よりも高く、基準期間(1981-2000)の平均収量がかなり過小評価される傾向にある。このため、将来の予測収量の相対値が大きく見積もられる場合がある。

病害虫

害虫の発育停止温度や発育阻害温度は考慮していない。世代数が増加しても作物が害虫に抵抗力のあるステージであれば、影響が生じないことも予想される。

気候変動適応策

倒伏対策

温暖化に対応した大豆-麦後作「元気つくし」の窒素九州特性を踏まえた窒素施肥法

  • 大豆-麦後作「元気つくし」は、水稲-麦後作に比べて初期生育が旺盛で、稈が伸び、耐倒伏性が低下するとともに、㎡当たり籾数が多くなる。
  • 大豆-麦後作の土壌は、水稲-麦後作に比べて窒素の無機化が早いため、イネの土壌由来の窒素吸収量は、幼穂形成期までは多く、逆に幼穂形成期~穂揃期では少なくなる。

・窒素吸収特性を踏まえた大豆-麦後作「元気つくし」の窒素施肥法は、幼穂形成期までの土壌由来の窒素吸収量は多いため基肥窒素を施肥基準から 3kg/10a減じ、幼穂形成期~穂揃期では少ないため穂肥窒素を 2回施用 (2+1.5kg/10a)とすることが、収量、品質の安定生産技術として有効である。

白未熟粒

近年の温暖化に対応した「ヒノヒカリ」の適正籾数と穂肥時期

  • 温暖化に対応するためには、「ヒノヒカリ」の㎡当たり籾数を28,000~30,000粒程度まで抑える必要があることが分かった。
  • 籾数は幼穂形成期の茎数と葉色から予測でき、収量を確保しつつ白未熟粒を低減するためには、穂肥時期を従来(出穂前20~18日)より遅らせ、出穂前7日頃に実施することが有効である。

白未熟粒、胴割粒

移植時期の繰り下げ

移植時期を遅らせることで、高温時の登熟を軽減できるが、近年の極端な高温化において効果に限界。ただし、本年は8月が多雨寡照であったため、高温の影響は少なかった。

品質低下(玄米)

中生の晩熟期で高温耐性を有する多収・良食味 の水稲 「実りつくし」

「ヒノヒカリ」と比較して、次のような特徴がある:

  • 出穂期は5~6日、成熟期は5~7日遅い「中生の晩」 に属する粳種である。稈長は同程度で、穂数はやや少ない。収量は8~10%多収で、千粒重は重い。玄米の外観品質は良好で、検査等級は優れる。
  • 炊飯米の食味は、外観、味、粘りともに良好で、良食味である。
  • 高温耐性は‘強’で優れ、 葉いもち 圃場抵抗性は‘弱’、穂いもち圃場抵抗性は‘やや弱’である。
  • 穂発芽性は‘中’で、縞葉枯病には同程度に罹病する。

白未熟粒

高温条件下でも玄米品質が優れる極良食味水稲新品種「元気つくし」

以下項目について記載されている:

  • 栽培特性
  • 高温登熟性
  • 品質・食味特性

品質低下

高温耐性品種の導入

1 等米比率 80%と効果は極めて高い。

地域:全県

主体:県

関連する気候変動情報

将来予測

年平均気温

RCP8.5シナリオでは、1981年-2000年の年平均気温と比較して、2046-2055年には上昇することが予測された。

年平均降水量

RCP8.5シナリオでは、1981年-2000年の年降水量と比較して、2046-2055年には増加することが予測された。

地域:九州

情報源

情報ソース
出典名
気候変動の影響への適応に向けた将来展望(平成31年3月)、農林水産省
作成時期
2019年3月